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中学受験 参考記事の紹介
◆ 地方の私立中、広がる「出張入試」 生徒集めに首都圏へ (2011.11.20 朝日新聞から)
◆ 中高一貫教育校、前年度より18校増の420校 (2011.11.4 リセマムから)
◆ 中学授業時間 公立3045時間 私立一貫校3800時間 (2011.11.3 塾ニュースから)
◆ 災害怖い 中学受験減? (2010.10.12 朝日新聞から)
◆ 先入観や誤解に惑わされがちな中高一貫校選びの注意点は
(2011.8.1 DIAMOND onlineから)
◆ 大学入試に挑むか回避するか。中高一貫「進学校」「付属校」「進学・付属校」の違い
(2011.7.1 DIAMOND onlineから)
◆ 生きた情報が手に入る「学校説明会」シーズン 開幕参加する際に注意すべきポイントは?
(2011.6.1 DIAMOND onlineから)
◆ 中高一貫校の今春大学合格実績ほぼ出揃う 教育力評価のバロメーター、東大合格者数は?
(2011.4.1 DIAMOND onlineから)
◆ 2011年度入試傾向分析 「ゆとり教育の終わりと親の収入減で「投資効果」が
厳しく問われた中学選び」 (2011.3.4 DIAMOND onlineから)
◆ 大手塾、個人塾、個別指導塾とタイプいろいろ
中学受験は学習塾選びから始まる
(2011.2.4 DIAMOND onlineから)
◆ 「集団指導」と「個別指導」の使い分け (2011.2.16 産経ニュースから)
◆ 2011年度 中学受験出願予測 (2011.1.7DIAMOND onlineから)
地方の私立中、広がる「出張入試」 生徒集めに首都圏へ
首都圏に入試会場を設けて「出張入試」を行う地方の私立中学校が増えている。少子化で生徒集めが難しくなり、地方より中学受験への関心が高い首都圏に活路を求めている。首都圏の中学が入試を始める前の「試し受験」として定着しつつある。
「西の果ての小さな学校ですが、関心を持って頂ければありがたい」
今月2日、長崎日大(長崎県)が東京都内で開いた学校説明会で、集まった約20人の保護者らに池内一郎教頭が呼びかけた。募集定員は80人。約1時間、寮の設備や英語重視の教育方針などを説明した。
同校の首都圏での入試は2006年に始まった。初年度の受験生は400人ほどだったが、今年1月は約2千人が受けた。池内教頭は「回を重ねて知名度が上がり、日本大学の系列校という点も関心をもってもらえたのでは」とみる。
来年1月にこうした出張入試をする地方の私立中は、大手進学塾などが把握する限りで16校ある。このうち5校が09年以降に始めたほか、2校が来年1月に初めて実施する。
その一つ、盛岡白百合学園(岩手県)の担当者は「少子化で、地元だけでは生徒集めが難しくなった」。近年は定員割れした年もあるといい、「中学受験が珍しくない首都圏からの生徒に来てほしい」と期待する。
ただ、小学校を出たばかりで、実際に親元を離れて入学する生徒は多くはない。今年1月に出張入試を実施した14校のうち、首都圏からの入学者数が2ケタに乗ったのは、函館ラ・サール(北海道)など数校。他は「数人」が大半で、ゼロの学校もある。入学者が1人だった西大和学園(奈良県)の担当者は「子どもを中学から寮に入れる親は多くはない」と話す。
それでも、受験生側、中学側双方にメリットがある。
今年1月の出張入試の受験者数は、14校で延べ約9千人に上った。募集定員180人に対し、東京会場だけで約2500人が受けた学校も。出張入試は大半が1月上旬にあるため、同月中旬にスタートする首都圏の中学入試に向けた予行演習として受験を勧める学習塾が多いという。
受験料は首都圏の私立中よりやや安い1万5千〜2万円が相場だが、ある地方私立中の担当者は「500人集まれば収支はトントン。『試し受験』でもありがたい」。
大手塾の関係者は「出張入試が増えた一因は、試し受験で得られる受験料収入にある」とみる。 大手進学塾・栄光ゼミナール広報室の山中亨課長は「地方の私立中にとって、出張入試は『首都圏で入試ができる力量がある』と地元でPRできる材料にもなる。学校のブランド作りの狙いもある」と分析する。
東京私立中学高校協会の近藤彰郎会長はこうした動きに対し「問題あり」という立場だ。「もし東京の有名私立中が地方で入試をしたとすれば、多くの受験生を集めるだろう。しかし、他の地域にまで手を広げる生徒の獲得競争が過熱すれば、私学経営は立ちゆかなくなる。教育内容で競うべきだ」
(2011.11.20 朝日新聞より転載)
中高一貫教育校、前年度より18校増の420校・・・文科省調べ
文部科学省は11月2日、各都道府県における「高等学校教育の改革に関する推進状況(平成23年度版)」の調査結果を取りまとめて公表した。
中高一貫教育校の設置・検討状況は420校で、平成22年度の402校より18校の増加となっている。その内訳は、中等教育学校49校、併設型288校、連携型83校。なお、平成24年度以降に設置が予定されている中高一貫教育校は、25校となっている。
総合学科の設置状況は、351校(前年度より2校増)、単位制高等学校については952校(前年度より21校増)となっている。
公立高等学校を対象とした各都道府県の高等教育改革の取組みについてみると、全ての都道府県において、普通科を総合学科に転換している。専攻科が設置されているのは35都道府県、総合選択制は31都道府県で導入されている。また、理数科を置く学校は185校、国際関係学科を置く学校は74校、福祉学科を置く学校は55校、情報学科を置く学校は19校、その他専門教育を施す学科を置く学校は69校などとなっている。
重点的に取り組んでいる課題(上位5つまで選択)については、「キャリア教育」(39道府県)がもっとも多く、次いで「基礎的・基本的な学力の定着」(35道府県)という結果になっている。
(2011.11.4 リセマムより転載)
中学授業時間 公立3045時間 私立一貫校3800時間
週刊ポスト(11月4日号)によると、少子化が進むにもかかわらず中高一貫校の受験者数が増え続けている。10年前には首都圏での受験率は10%台前半だったが、2008年には20%台に到達した。2005年には富山県で私立片山学園が開校し(高校は08年)、47都道府県すべてに一貫校が誕生した。
人気の理由は、中高一貫校に「我が子の学力を伸ばしてくれる」という評価が定着しているからだろう。入試実績をはじめとする教育情報の調査・提供に45年の歴史を持つ「大学通信」の大野香代子・編集長が語る。
「最大のメリットは、高校受験による授業の空白期間がないため、中学と高校で授業内容が重複せず、効率的にカリキュラムを組めることにあります。特に私立一貫校の場合は学習指導要領による制約はあるものの、中1〜高2の5年間で6年分の授業内容を終わらせ、高3では大学受験に特化した教育を行なっている学校が多い。それが大学合格実績の高さに繋がっています」
最も差が出るのが中学時代である。先取り教育を行なう私立一貫校と公立で、3年間の総授業時間を比べると一目瞭然だ。関東・関西圏の大規模な私立一貫校では3,800時間以上であるのに対して、公立では3,045時間(来年度以降の「新学習指導要領」による)となっている。
例えば神奈川の桐蔭学園では総授業時間数は3,870時間。うち、英語の総授業時間数は630時間と、公立高校の420時間に対して1.5倍、数学の総授業時間数も630時間で公立高校の385時間の1.6倍以上だ。大阪府の清風高校は総授業時間数3834時間。英語は723時間と公立高校の1.7倍、数学は686時間で1.8倍弱もの差がついている。
最難関とされる東大合格者数の推移を例に挙げると、1990年以降は私立一貫校が公立校を大きく上回っている。1999年からは公立一貫校が相次いで新設されたことで「公立復権」の兆しが見え始めたものの、依然として「私立一貫校は受験に強い」という評価は揺らいでいない。
保護者が重視するのはまさにその点だ。「大学通信」のアンケート調査によれば、中学・高校に求めるものは圧倒的に「大学合格実績」となっている。中学受験では志望校を親が選ぶケースが大半なだけに、それが一貫校人気に結びついているといえそうだ。
公立と比べ、ネックは学費だろう。多くの私立の、学費以上に授業時間、教員のきめ細かいサポート、進学実績を考えると決して高くはない気がする。
(2011.11.3 塾ニュースより転載)
災害怖い 中学受験減?
「学校遠いと帰宅困難に」
来春の首都圏(東京都と神奈川、埼玉、千葉3県)の中学受験者が大きく減りそうだ。
大手塾などによる9月の模擬試験受験者が昨年より5%減っており、最終的には7%減になるという予想もある。不況に加えて、東日本大震災が親子の心理に影響を与えた結果とみられている。
◇9月模試受験5%減
9月にあった首都圏中学受験の3大模試(四谷大塚、日能研、首都圏模試)の受験者数は計約4万2千人で、昨年同期より約2300人(5%)少なかった。9月模試の受験者数は2008年から減り続けているが、今年の減り幅は、別の大手塾が模試を新設した2010年を除くと、最大だ。
首都圏の中学受験者は、2002年に公立校で週5日制が完全導入されて授業内容が減ったのを機に急増。2009年は小学6年全体の21%にあたる約6万4千人に達したが、2010年に減少に転じた。
日能研広報部は「2008年のリーマン・ショック以降の不況で、経済的負担の大きい中学受験を避ける親子が増えている」。大手塾関係者によると、中学受験の学習が始まる小4から3年間塾に通うと200万円以上の費用がかかるという。
加えて来春入試は、震災がその傾向に拍車をかけているようだ。
首都圏中学模試センターの樋口義人社長は「大災害のときに帰宅困難になる恐れがある遠距離通学をして私立へ通わせるより、近くの公立でいい、と結論を出す親子が少なくないようだ」と分析する。
「1時間以上かけて子どもを通学させるべきなのか。震災以降迷っている」。
10月10日に川崎市であった私立中説明会に出た、神奈川県藤沢市の男性会社員(47)はそう打ち明けた。来春に小6の娘が受験する横浜市の主婦(36)は「同級生の親の中には『震災で不況が続いて家計の先行きが不安なので中学受験をやめた』という人もいる」。
首都圏中学模試センターや私立中が催す保護者向け説明会では、各校の防災対策についての質問も多いという。「中学受験を決めた親は、逆に『先行き不安な時代だからこそ、私立で力を付けさせたい』と考えている。中学受験に対する保護者の価値観が分かれてきている」と樋口社長は話している。
◇一緒の時間を増やす家族も
中学受験に詳しい森上教育研究所の森上展安代表の話
震災後、子どもを塾やテストに行かさず、一緒に過ごす時間を増やした家族も多い。経済的理由で通塾をあきらめたケースと合わせて、来春の受験者数は今春より7%減るとみている。下位校を中心に定員割れが増えるのは確実だ。
(2011.10.12 朝日新聞より転載)
先入観や誤解に惑わされがちな
中高一貫校選びの注意点は
私立中高一貫校を選びには先入観や誤解が常につきまとう。
たとえば、近隣にある一貫校はよくない評判が印象に残り安い反面で、離れたところにある一貫校は情報が少なく、いい学校に見えてしまうということはよく指摘されることだ。
親戚や知り合いが卒業した、あるいは在学しているなどという学校についての情報は手に入りやすい。身近なひとから聞いた実態だからなおさらのこと、良くも悪くもそのまま鵜呑みにしてしまう。ひとりの意見に過ぎないのだが、決めつけてしまいがちだ。こうした先入観や誤解を元に、知らず知らずのうちに学校を独断的に評価してしまっていることが意外に多い。
◆「入ってしまえば楽」 「親同士の付き合いが大変」は本当か
また、中高一貫校全般に対する先入観や誤解も多い。いくつか例を挙げよう。
一貫校そのものに対するものだと、「有名大の付属校だから6年間のんびり過ごし、エスカレーターで楽に大学まで進学できていい」「中高一貫校だから6年間は保証されている」「私立だから親同士の付き合いが大変」などだ。
付属校だから6年間楽に過ごして大学へというのはかなり甘い考えだ。そうであってほしいという気持ちは分かるが、大学入試がない分だけ楽、その程度のものだ。
たとえ全員が併設大学に進学できる有名大の付属校だとしても、希望の学部に進学するとなれば普段の学習成績がものをいう。どこの学部でもいいと高を括っていると、成績が悪くて落第となる学校もある。6年間ずっと在学できるかどうかも入学後の頑張り次第なのだ。
公立中学校にトップの一貫校から転校してくる生徒が少なからずいる。授業についていけなくなっているのだ。「合格したらゲームなど好きなことしていいから、受験勉強をがんばりなさい」などと言っていると、入学後ほんとうに勉強しなくなり、ついには公立中に転校することになって元の木阿弥だ。一貫校合格はゴールではなくスタートなのだ。決して安穏としていられるわけではない。
さらに保護者との付き合いだが、多くの場合、生徒がいろいろな地域から通っているため近所に同級生の保護者がおらず、それほど付き合いが濃密にならないのが一般的だ。保護者会や文化祭などのイベントで顔を合わせるぐらいだ。
◆学校ごとに発生する 誤解のあれこれ
この手の先入観や誤解は、それぞれの学校についても多々発生する。
「東大合格者が出ているから進学校」「スポーツが強いから進学は弱い」「有名人が卒業しているから安心」「大学の偏差値が低いからその名の付いた学校はレベルが低い」などとイメージで判断してはいけないのだ。
東大合格者が複数出てていても、学校が面倒を見ているわけではなく、予備校や塾に通って個人の力で合格しているところもある。その実績だけで進学指導に優れている学校と判断するのは早計で、実情については情報収集が必要だ。
スポーツに力を入れているからといって、進学は弱いということにもならない。智辯学園和歌山は甲子園大会の強豪として知られるが、東大に15人、京大に28人合格している和歌山県トップの進学校でもある。
有名人が出た学校だからといって、自分の子どもに合うかどうかはまるで別問題であることは当たり前だ。
大学付属校は今、多様化している。大学入試での偏差値が低いから、その名前が付いている付属校も同じレベルだろうというのも誤解だ。今は早稲田や慶應などごく一部の付属校を除き、併設大学へ進学できるメリットだけでは生徒が集まらない。そのため他大学受験を目指す進学校に方針を転換する学校が増えており、かなりの実績を出しているところも少なくない。
こういったさまざまな先入観や誤解を排除して学校選びをしていかなければならない。周囲から得た情報にこだわっていると、誤解によってみすみす学校選択の幅を狭めてしまうことにもなる。たくさんの一貫校があるように見えても、受験して合格できる可能性を考えると実際には選択肢はそんなに多くはない。先入観や誤解を修正するためには、学校説明会に積極的に参加してみるのがいい。自分の目で確かめることで学校の印象が変わり、意外にいい学校だと感じるようになることだってある。
◆学校説明会では こんなポイントに注目
ただ、その学校説明会でしっかりチェックしておくべきポイントがある。
例えば、中堅の学校で東大合格者が出たとしよう。学校説明会でこの生徒は入学時にこのような成績で、この後、こういう伸び方をして、途中いろいろ伸び悩む時期はあったけれど、学校の指導のもと最終的に東大に合格することができたというストーリーが披露される。学校がこうした実績を強調するのは当然のことだが、大切なのはその生徒と自分の子どもをダブらせて考えられるかということだ。在校生全員が同じように成功の道を歩むわけではないのである。
むしろ真ん中ぐらいの成績の生徒がどこの大学に合格しているのかというデータの方が現実味がある。平均的な学生の話が説明会で出るかどうかが重要だ。「頑張った生徒もいますが、今はこのような状況で、6年後にはこうしていきたい」と話が続けば、納得できる部分は大きいのではないだろうか。大切なのは今の話ではなく、子どもが在学するこれからのことをどれだけ説明できるかだ。
また、校長先生の話にもじっくり耳を傾けたい。学校の教育方針、建学の精神を基にどう教育しているのかなど、熱意たっぷりに語られるところだ。校舎を建て替えます、進学に力を入れるため○○コースを作りましたなど、ハード面の話もけっこうだが、そればかりではいただけない。
資金があればいくらでも校舎は建つ。経営が健全だというアピールは教育にはあまり関係ない。新校舎は学習環境として最適であることは間違いないが、それはプラスαでしかないし、校舎が古くても評判の高い学校はたくさんある。
それよりも教育自体の考え方を重視せねばならない。生徒をこう伸ばし、このような学習や体験を通して、しっかりとした学力や人間力をつけるというたぐいの話を、学校のトップ自らがどれだけ説得力をもって語ることができるかがポイントだ。
◆親としての「印象」が 最後の決め手になることも
最終的にはごく当たり前のことが学校選びの決め手になることがある。生徒や教職員がどれだけ「感じいい」か、親としての印象だ。これは個々人それぞれの感覚の問題なので理屈ではなく、データ化もできない。
学校説明会に出かけて、「○○教室はどこですか」と生徒に尋ねたところ、「あそこを曲がった右です」と言うのではなく、「こちらですよ」と案内してくれたことに感激して入学したという例がある。自分の子どもも「こうなったらいいのに」と思うからであるし、そう教育してほしいという期待と学校の校風が一致したのである。
この「感じのいい」という根拠は人それぞれで、正解はない。生徒一人ひとりまで統制がとれている学校を「目が行き届いている」と感じるか、「個性を伸ばす自由さがない」と思うかは、その人次第なのだ。
合格実績や偏差値などのデータも大切だが、学校に足を運び、そこで見たり感じたりしたことが、学校選びでは欠かせないことだということをお分かりいただけよう。活字やネット、クチコミなどの情報だけに頼るのではなく、自分の感覚を信じ、子どもに合う学校を選んでほしい。
(2011.8.1 DIAMOND onlineより転載)
大学入試に挑むか回避するか。
中高一貫「進学校」「付属校」「進学・付属校」の違い
一貫校は大きく進学校と付属校の二つに分かれる。進学校は当然のことながら、入試を経て大学に進学を目指す学校。一方、付属校は併設大へ優先的に入学できる学校だ。付属校を選ぶと中学入学の段階で、大学までの進学がほぼ決まることになる。
進学校では中高6年間を活用して先取り学習を行い、大学受験を視野に入れた学力を身につけさせることに主眼を置いた教育を展開している。その結果、大学合格の実力が養われていく。それに対して付属校では6年どころか大学の4年を加えた10年にわたり、高校入試だけでなく大学入試からも解放された、ゆとりと充実の教育が展開されている。例えば、付属校では英語だけでなく第二外国語を学べたり、大学の授業の先取り学習があったり、先々を意識した教育が行われている。付属校からの進学者は建学の精神をよく理解しているといういう意味で、大学からはリーダー的存在になってほしいとの期待もある。
◆併設大への進学を保証しながら 他大学受験を認める「進学・付属校」も増加
このように、かつては進学校と付属校はまったく別のジャンルの学校だった。しかし、最近ではその境界が曖昧になってきている。進学校と付属校の中間的な存在の、言ってみれば「進学・付属校」が増えており、これが人気を集めているのだ。併設大への進学を保証しながら、他大学受験を認める付属校だ。
もともと付属校は併設大への進学を保証してくれるからこそ人気が高かった。90年代前半までは大学入試が厳しく、合格を勝ち取るのはひと苦労だったからだ。ところが、1992年をピークに18歳人口は減り始める。その一方で大学数は2倍近くに増え、大学には年々入りやすくなっていく。
そうなると、大学入試が厳しいから付属校を選ぶという価値が低下する。併設大が一般入試でも容易に入れる大学ならば、わざわざ中学から進学させることはないという考えが広まり、難関大学を目指す進学校の人気がアップしたのだ。こうして、まだまだ入試が厳しい慶應義塾大や早稲田大など、一部の難関大付属校だけが人気突出する現在の序列が出来上がっていった。
こうなってくると、大半の付属校は生き残りが厳しくなっていく。そこで7〜8年前から新たな形の進学・付属校が登場してきたのである。併設大学への進学を確保しながら、より難関を狙う「進学の自由と安定」が両立する学校だ。
現在、この制度は共立女子、共立女子第二、実践女子学園、法政大、成蹊などが採用している。この他にも条件付きで系列以外の大学受験を認める付属校もある。帝京大は国公立大や早慶などの難関私立大に限って、中央大付は国公立大と中央大にない学部・学科の大学、明治大の付属校は国公立大のみ他大学受験を認めている。
ただ、注意しなければいけないのは「他大学受験を認める」という権利があるだけなのか、それとも学校で他大学受験の面倒までみてくれるのかということだ。「他大学受験の相談には乗るが、自分の責任で挑戦してほしい」というのと、「他大学を受験できる力をつけた上で他大学を受けてもいいし、併設大に進学してもいい」というのとでは、ずいぶん異なる。このあたりの見極めが重要になってくる。学校説明会でしっかりチェックしておきたいポイントだ。
◆進学校と付属校の分かれめは 併設題への内部合格率が基準
このように大学の付属校には「併設大への内部進学を前提とする」学校と「他大学受験を目指す」学校の両極が存在することが分かる。その両極の分かれめは併設大への内部合格率(付属校からの併設大内部合格者数÷卒業生数×100)で、はっきり見えてくる。
目安としては75%以上は併設大への内部進学を目指す旧来的な付属校、25%以下が付属とは名が付くものの他大学受験を目指す進学校で、その間が進学・付属校だ。
75%以上となる付属校の中でほとんど100%に近いのが早慶の付属校。今年の実績で見ると、昨年、中学を新設した早稲田大高等学院が99%、慶應義塾湘南藤沢は99.5%が、そのまま併設大に進学している。この他にも明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大、日本女子大、関西でも同志社大、立命館大、関西大、関西学院大などの難関大付属校は高い内部進学率となっている。
逆に25%以下の代表格が武蔵やフェリス女学院だ。この2校はほとんど併設大には進学せず、東京大を初めとする難関大進学者が多い。実質的な進学校だ。
その他にも専修大松戸、大妻、国学院大久我山、白百合学園、神奈川大付なども、付属校というより進学校として認知されている。これらの学校も以前は内部合格率は高かったが、前述の通り大学入試の易化という時代の流れの中で、進学校に変わっていった学校である。さらに、今は内部進学率が高い付属校の中にも、今後は進学校を目指すと公言している学校も少なくない。
国立大学にも筑波大付駒場や筑波大付など付属校もたくさんあるが、これらも名前だけ大学の付属校で、併設大への進学の特典はない進学校だ。だから東京大教育学部付属中等教育学校から東京大への優先進学枠はない。お茶の水女子大では付属校から10名程度、お茶の水女子大に内部進学できるのは極めて希な例である。
その両極の間にある内部進学率が25〜75%の学校にはさまざまな背景がある。「進学の自由と安定」を明確に打ち出している進学・付属校だけでなく、同じ併設大への進学を優先的に目指しているものの、結果的に内部進学者が減っている付属校も含まれている。こうした進学・付属校もやがては25%以下となって完全な進学校となるか、あるいは今までと同じ進学・付属校のままを維持するのかは、学校の方針による。
◆子どもにどの学校が向いているか 本人希望も確かめつつ保護者が最終的判断を
確かに進学・付属校の「浪人を避けることができる」という制度は、付属校にしかない画期的なシステムだ。ただ、こういった保証があるため、進学校のような切羽詰った気持ちで受験勉強しないとも言われる。この制度を採用してから逆に内部合格率が高まった付属校もある。
一般的に付属校は「優しい性格で競争に向いていない」「のんびりした環境で力を発揮する」「打ち込みたいスポーツや趣味がある」などという子どもに向くとされる。しかし、最近では一般入試で入学してくる生徒との学力差が拡大しているという大学側の危機感から、受験はなくとも学力アップを目指す付属校も増えてきている。
実際に、大学生の学力低下に危機感を抱く企業の中には、採用選考時に内部進学者に厳しい目を向けるところも出てきている。もともと付属校が進学も視野に入れるようになった学校改革は、優先入学で進学する生徒のレベルアップを図るのも目的の一つだった。中学に入学すればあとはエスカレーターに乗って大学進学、とはいかなくなっており、親も子も安心してはいけないのだ
逆に進学校は「厳しい環境の中でこそ伸びる」「やりたいことはこれから探す」という子どもに向くと言われてきた。しかし、付属校に向いていそうな「のんびりした」子どもでも、進学校で生徒全員が志望校目指して頑張る雰囲気の中で、徐々にやる気が起きてくることもある。
どの学校に子どもが向いているかは子どもの性格、さらには子どもの中学受験への取り組み方などを参考にするといいが、最終的には本人の希望を確かめながら保護者が判断していかねばならない。
(2011.7.1 DIAMOND onlineより転載)
生きた情報が手に入る「学校説明会」シーズン開幕
参加する際に注意すべきポイントは?
いよいよ学校説明会のシーズンが始まった。ピークは秋になるが、受験直前の1月に開催する学校も少なからずあるという、長丁場である。志望校がどんな学校かを知るいちばんいい方法が、この学校説明会に参加することだ。パンフレットやホームページでは見えなかった「生きている情報」を手に入れることができる絶好の機会だ。また、家から学校にどのような交通機関を使い、もし入学したならと思い描きながら学校まで出かけるのは受験にも学校決定にも参考になる大切な情報源だ。
中学受験において学校説明会への参加は、すでに当たり前のこととなってきている。しかし、実践となると簡単なようでなかなか難しい。
◆難関校をベンチマークに いろいろな学校を見てみる
塾からは「6年生になると塾通いや模擬テストの送り迎えが頻繁になり、勉強が忙しくなるから5年生の間に行っておきなさい」と指導されることが多い。確かにその通りなのだが、問題は5年生の段階では、志望校が現実味を帯びていないということだ。
つまり、「これから成績が伸びれば」と、現実に受験することになる学校のレベルには幅がある状態で説明会に参加する場合が多いのだ。そうなると、どうしても偏差値の高い難関校に行きがちになる。
もちろん、トップ校を見ておくことは大切なことだ。ほかの学校を回っていく時のひとつの目安になるからだ。平日の説明会で休み時間の生徒の様子を見たり、文化祭などに参加して生徒の活動の姿が分かったりすれば、他の学校を回った時に「トップ校の生徒はこうだったから」と比較の指標になるのだ。
しかし、難関校ばかり回っていてはいけない。子どもを特定の学校に入れたいばかりに、1校の説明会に通い続ける親がいるが、勧められない。
6年生の秋になって現実と向き合い始めると、今まで思いもしなかった学校が志望校になることはよくある。塾で仲良くなった母親や塾の先生から勧められる学校が、今まで説明会に参加しなかった学校である場合もある。いろいろな学校を見ることで、他校の事情や雰囲気が分かり、本命の学校を新たな視点から客観的に見直すきっかけになる。
特に忘れがちなのが、他に先んじる1月入試実施校だ。東京に住んでいるとしても、埼玉や千葉まで足を伸ばしておきたいものだ。
学校説明会は、最近、多様化が進んでいる。もっともオーソドックスなスタイルは、学校長が教育方針や建学の精神を話し、進路指導教諭が生徒の進路状況、入試担当教諭が入試の注意点などを話すというようなものだ。これに校内見学、授業参観もあるのが一般的だ。人気の難関校はほとんどこの形式。休みの日だけでなく平日にも開催されている。
◆オープンスクール、入試模擬体験… 多様な説明会を開催する学校も
一方、子ども参加型のオープンスクールも増えている。オープンスクールとは1日学校体験のこと。子どもが理科実験教室での授業、ネイティブの先生による英会話の授業、クッキング教室などを体験する。クラブ体験などもあり、例えば本郷ではラグビー、軟式野球、バレーボールなど多くの種目で実施されている。山脇学園はブラスバンド体験を行っている。子どもが模擬授業やクラブ体験を行っている間に、保護者は学校の説明を受けるのである。
オーソドックスなタイプの説明会でも、在校生の親が話をする学校が増えている。学校生活の様子などが、中学受験を体験した親の目線で語られるので好評だ。
入試の模擬体験を実施する学校もある。実際に入試を行う教室で、過去に出題された問題を同じ時間配分で解くので入試の予行演習になる。また、入試問題の解説や「来年は今年と変わらない傾向です」などと出題のポイントを説明会で教えてくれる学校もある。
説明会を複数回開催する学校は多いが、今までは同じような内容で行い、いつ参加してもいいという形が主流だった。最近は開催回ごとにそれぞれテーマを設定し、毎回違った説明会を行う学校も出てきている。何度も学校に足を運んでもらうことによって、志望校として気持ちを固めてもらいたいという狙いがある。
さらに、親のスケジュールに合わせて平日の夜に行われる説明会、駅から離れている学校では交通の便を考え、駅前に会場を借りて行われる説明会もある。
◆重要なのは「熱意」と「わかりやすさ」 そして「参加する側の目的意識」
このように各校が工夫する説明会だが、実は人気のある説明会は以前から変わっていない。それは先生の熱意が伝わる説明会、生徒の指導内容が具体的でわかりやすい学校だ。この「熱意」と「わかりやすさ」が説明会の最大のキーポイントになる。
ただ、いくら熱意にあふれ、わかりやすい説明でも、参加するほうが何の目的意識ももたずに、ただ漠然と参加していたのでは大切なことを見落とすこともある。説明会に出席した各校を共通のチェックポイントで見比べるように準備しておきたい。
学校に行ったら先生の参加者への対応をよく見る。平日なら在校生の様子も観察する。学校の雰囲気を感じることも重要だ。さらに、授業参観や校内見学などには積極的に参加し、施設・設備はそろっているか。学校長の教育方針をよく聞いて、どんな人材を育成しようとしているのか。こういったことをメモにまとめておいて、後から比較できるようにすることが賢い説明会活用法だ。
注意するポイントはまだある。
まずは「学校に聞きたいこと、期待することをメモして参加する」ことだ。説明会に出かける前に学校のホームページで下調べして、疑問点や気になること、期待することなどをメモにして参加しておくといい。事前に準備して参加すれば、説明会の内容をより深く理解することができる。
「説明会でもらった資料は、学校ごとに整理しておく」ことも怠りがちだ。説明会に参加すると、学校のパンフレットや募集要項、過去問など大量の資料を手渡される。それらは気を配って保存しておかないと、説明会への参加が増えるたびに学校の資料が多くなって、資料探しに思わぬ手間がかかる。
◆イメージや評判、身近な在校生の 印象などはいったん白紙にして参加を
心得の上で重要なことは「先入観を捨てて参加する」ことだ。これが意外に難しい。世間に流布しているイメージや評判だけでなく、在校生個人の印象でも学校を判断してしまうことがある。特に学校が家の近所の場合は、在校生が顔見知りであることも多く、また、学校に関するいろいろな噂が耳に入りやすいため、つい厳しい評価を下してしまうことになる。逆に、親戚の母校、身近な人が卒業したなどと聞くと、ついつい高い評価をしている場合もある。これはインターネットなどから得られる情報も同じだ。
いいこともよくないことも、自分の目で確認してから、くらいの気持ちでいたほうがいい。根拠のない思い込みで学校の本当の良さを見逃しているとしたら、大きな損失である。
最後に「一緒に参加している保護者の雰囲気を観察しておく」ことだ。入学すればPTAの一員として、その保護者たちと6年間ともに歩むことになるが、中高一貫校では保護者の関係は濃密である。一緒にやっていけそうかどうかまで気を配っておきたい。
説明会には予約が必要な学校も多く、人気校ではすぐに定員がいっぱいになってしまう。不幸にして説明会に参加できない場合は、公開している文化祭、合唱祭、体育祭などの催しに参加するといいことも付け加えておく。
(2011.6.1 DIAMOND onlineより転載)
中高一貫校の今春大学合格実績ほぼ出揃う
教育力評価のバロメーター、東大合格者数は?
◆やはり影響力が大きい東大合格者数
最難関合格は確かな教育力の証し
状況は騒然としているが、今年の一貫校の大学合格実績がほぼ出揃った。大学合格実績は翌年入試の志願者数増減に直結する。とりわけ影響力の大きいのが東京大学だ。
「どこの一貫校や塾などでも東大、東大と騒いているが、子どもを東大に進学させようとは思わないから関係ない」という考え方もある。その本音は「子どもと親が望む第一志望校には合格させてほしい」ということだ。しかし、最難関の東京大に合格者がいる学校は、子どもがどの大学・学部を第一志望にしようとも、合格させる確かな教育力がある証しに他ならない。
東京大の合格状況は、ひとつの指標に過ぎないが、同時にもっとも信頼性のおける教育力評価でもあるのだ。3月25日現在の一貫校の合格状況を見ていこう。
◆今年も首都圏一貫校で
東大合格者数が増加傾向
昨年は、首都圏の一貫校で合格者が増えたところが多かったことが話題になった。地方の受験生が東京大より地元の国立大を選んだからだ。経済不況の影響が大きいと見られるが、今年もその傾向は変わらなかった。東京大の発表データによると、東京からの合格者占有率は昨年32.5%だったが、今年はさらにアップして33.8%となった。東京以外の関東地方は昨年と同じ18.3%の割合で、合計すると昨年に続き関東地方からの合格者が5割を超えたことになる。
合格者上位は一貫校が圧倒。ベスト10は国私の一貫校ばかりだった。首都圏の一貫校では昨年、東京大合格者が30人増えた開成が今年はさらに4人増やして172人となり、30年連続トップ。昨年22人増えた駒場東邦も今年は2人増やして63人の合格。女子御三家の桜蔭が8人増の75人、女子学院が6人増の32人、雙葉が1人増の16人合格だった。女子御三家の合格者が3校そろって増えるのは9年ぶりだ。
この他にも栄光学園が6人増の63人で聖光学院を抜き、神奈川トップに返り咲いた。3年連続で合格者が増えているのが城北で26人合格。桐朋が11人増の32人、巣鴨が14人増の30人だ。特に巣鴨は日本で最難関といわれる医学部である理科3類に5人合格。トップの灘の17人に次いで開成とともに2位に入った。慶應義塾大医学部でも開成の11人合格に次いで8人合格で2位で、医学部に強いところを今年も発揮している。
他に暁星が6人増えて14人合格、白百合学園が4人増えて10人、世田谷学園が3人増えて7人、光塩女子学院が4人増えて7人、東邦大付東邦が5人増えて7人合格などとなっている。
◆渋谷教育学園渋谷、開智・・・
“新顔”も目覚ましい伸び
こういった伝統的な進学校だけでなく、新顔の伸びも目覚ましかった。渋谷教育学園渋谷が5人増えて15人合格。開智は17人合格で昨年の4人から4倍以上の伸びで、開校以来最高の合格者数となった。これは埼玉の私立で過去最多の合格者数でもあり、トップの県立浦和の30人に次いで県内2位に躍り出た。さらに、今年の中学入試で人気を集めた栄東も12人合格で昨年の倍の合格者数だった。この私立2校の大きな伸びによって、埼玉での私立一貫校人気がさらに高まるはずだ。
東京大合格者数で二ケタを超えることには大きな意味がある。2007年から2011年の東京大に10人以上合格した学校数は77→78→79→78→77校と推移しており安定している。毎年、新しく伸びて10人以上の学校が出てくれば、どこかの学校が10人を割ることの繰り返しなのだ。それだけ限られた学校しか10人合格をクリアできず、それを維持していくのはたいそう難しいことなのだ。
学校改革に力を入れた結果が出ている学校にも注目したい。開校以来初めて東京大に合格者を出したのが十文字。さらに、淑徳も2年連続で東京大に合格者を送り出した。入学時の偏差値は伝統校に比べて高くはないが、卒業時には最難関の東京大に合格者を送り出しているのだから、その教育力の高さは注目に値する。
合格者を出したのが1年だけだと「たまたま優秀な生徒が在学していて、個人の力によるもの」とまわりに取られかねないが、連続して合格者を出すと学校の教育力の成果として評価されるようになる。
◆中高一貫化後、初の卒業生を
送り出した学校も健闘
今年は中高一貫生が初めて卒業した学校も多かった。なかでも東京での試験を実施している富山の片山学園は、今年1期生86人を送り出した。主な合格実績は東京大に3人、京都大に2人、北海道大、東北大、大阪大に各2人、国公立大医学部に7人合格だった。初年度だから全員現役生による高い実績だ。
これ以外でも大宮開成が東京大に1人合格、淑徳与野は京都大に1人合格。中高一貫校になってから卒業生を送り出して5年目となる桐蔭学園中教(中等教育学校の略称)が、昨年に比べて東京大合格者が6人増えて13人合格だ。4年目となる麗澤は東京大に1人合格、3年目となる浦和明の星女子は東京大に4人合格だった。
公立一貫校では、今年は都立の白鴎が初めて6年間学んだ一貫生を送り出した。都立として初めて設置された一貫校で結果が注目が集まったが、東京大5人、東京工業大3人、一橋大2人、早稲田大38人合格だった。昨年は前記の国立3大学に合格者ゼロで、早稲田大8人合格だったから大躍進といえ、中高一貫校化は成功した。来年の注目は、一貫生の卒業生を初めて送り出すことになっている都立一貫校の小石川中教、桜修館中教、両国、区立の九段中教だろう。
一方、前年に合格者が増えると翌年は減る、隔年現象というもある。今年、隔年現象に見舞われたのは麻布が21人減の70人、海城が15人減の34人、聖光学院が5人減の60人、渋谷教育学園幕張が13人減の34人、浅野が4人減の32人、豊島岡女子学園が11人減の13人などだ。渋谷教育学園幕張は合格者が減ったものの、千葉・県立が19人合格にとどまり、千葉県トップの座を守った。攻玉社は昨年、合格者数が3倍に増えたが今年は4人減の14人にとどまっている。
◆東大と連動するケースが多い
早慶の合格者数は
次に早稲田大、慶應義塾大の実績を見てみよう。慶應義塾大は追加合格者を含まない当初合格者数同士で比較した。
両大学の高校別合格者数のトップは開成だった。早稲田大280人、慶應義塾大215人で合計すると495人も合格している。両大学の合格者が増えているところを見ると、浅野が早稲田28人増の181人、慶應が54人増の176人合格。城北は早稲田29人増の161人、慶應は20人増の109人、巣鴨は早稲田35人増の103人、慶應は14人増の77人合格だ。
早慶の合格者数は東京大の増減と連動しているケースが多い。東京大合格者が伸びた開智は早稲田大が44人増の154人、慶應が18人増の55人合格、栄東も早稲田が28人増の130人、慶應が17人増の71人合格などとなっている。
「私立大は何校も受験できるから、実数はかなり少ないのでは」と思われるかもしれない。しかし、今の大学入試全体に言えることだが、受験生は同じ大学で、それほど多くの学部を併願しない。以前に比べて入りやすくなったため、何校も受けなくて済むようになったということもある。さらに、受験料は一般入試で3万5千円のところが多く、併願校が多いとかなりの出費になることも、この不況期に受験校数が多くならない要因だ。
例えば浅野は今年、早稲田大に延べ181人合格しているが実合格者数は141人で、ひとり平均1.28校に合格しているにすぎない。また、2010年の慶應義塾大の併願率(志願者数÷志願者実数)は大学発表で1.5だった。つまり、慶應を受けた受験生は平均して1人1.5学部にしか出願していないのだ。
◆関西は東大・京大の総数で見る
灘と東大寺学園の“逆転現象”発生
一方、関西の状況はどうか。関西の進学トップ校では、東京大と京都大の合格者数総数で見ていく必要がある。灘は東京大に強いことで知られるが、今年は東京大が4人減って99人で、京都大は10人増えて45人合格だった。逆に、京都大に強い東大寺学園は東京大が6人増えて43人、京都大が7人減って64人だった。この2校で逆の現象が起きた。
「東京大+京都大」の合格者数で見ていくと、京都大トップの洛南は「25人+88人」で113人(昨年比+14人、以下同じ)、京都大2位の西大和学園が「27人+83人」の110人(+5人)だった。この他でも伸びた学校を見ていくと、洛星が「12人+63人」の75人(+16人)、大阪星光学院が「11人+53人」の64人(+11人)、大阪桐蔭は「3人+46人」の49人(+10人)、帝塚山は「1人+28人」の29人(+15人)だった。
昨年、初めて中高一貫生が卒業し京都大に13人合格者を出した公立の洛北は、今年は東京大に2人、京都大に15人で計17人合格で、昨年より4人増となった。
(2011.4.1 DIAMOND onlineより転載)
2011年度入試傾向分析
「ゆとり教育の終わりと親の収入減で「投資効果」が厳しく問われた中学選び」
今年の首都圏の中学受験の受験者は約5%減ると見られていたが、大手塾の日能研によると約1.9%の微減にとどまった。受験率も昨年の20.3%から0.6ポイントだけ下がって19.7%。受験生1人当たりの併願校数は5.0校で昨年とほぼ同じだったという。厳しい経済不況の中でも私立中人気は根強かったことになる。
今年の保護者は子どもが小学4年生の時にリーマンショックに遭っている。塾通いを始めていたとすると、経済的な不透明感の中で中学受験を目指してきたことになる。それだけ、中学受験を完遂する強い意志を持っていたからこそ、この数字でとどまったのではないかと想像している。
◆今年は難関上位校、とくに 東大合格者が大幅増の学校が人気に
今年の入試で目立ったのが難関上位校の人気が高かったことだ。大学合格実績とりわけ東京大の合格者が大きく増えている学校に人気が集まった。
男子校では東京大合格者が138人から168人に30人増えた開成が5.5%増えて志願者1176人、競争率は2.9倍で昨年の2.7倍からアップした。同様に東京大合格者が16人増の聖光学院、22人増の駒場東邦、15人増の海城、12人増の攻玉社などが人気を集めた。
海城は今年から高校募集を停止して一貫教育のカリキュラムを強化したことも人気を押し上げる要因になっている。全体の志願者は253人、16.8%増えて1758人だった。東京大合格者が3倍に増えた攻玉社は、一般生だけで志願者は318人、21.7%増。競争率も1回目の試験が昨年の2.6倍から3.3倍、2回が1.9倍から2.8倍にアップした。
女子校でも同様の傾向が見られた。女子御三家で志願者が唯一増えた雙葉は、東京大合格者が6人増えて15人だった。豊島岡女子学園は7人増えて24人合格で、志願者は208人増の2913人。首都圏女子校トップの志願者数だ。競争率も1〜3回まで順に2.6倍、10.1倍、9.6倍でいずれも昨年を上回り、特に2回、3回はかなり厳しい入試となった。
共学校では東京大合格者19人増の47人で開校以来最高の合格者となった渋谷教育学園幕張が、やはり志願者を増やしている。
こう見てくると、上位校では東京大合格者数が志願者数の動向に大きく影響していることが分かる。東京大だけでなく、全体的に大学合格実績がアップしている中学の人気は高い。男子校では世田谷学園、鎌倉学園、共学校では栄東、西武学園文理、専修大松戸、女子校では浦和明の星女子、鴎友学園女子、洗足学園、東洋英和女学院、共立女子などだ。
こういった大学進学実績至上主義ともいえる動きは近年顕著になった傾向だ。不況の影響で教育投資へのマインドの冷え込みもとあいまって、中学受験・進学に費用対効果がより厳しく求められているようになりつつあるようだ。
◆大学進学重視は早慶 立教などの根強い人気にも表れた
志望校選びでの大学進学重視は、早い時期から大学進学の道を確保し、中高6年間をかけて生徒を伸ばしてくれる有名大付属校の人気にも繋がっている。この意味では早稲田大や慶應義塾大、立教大などの人気が根強かった。
慶應の付属校は普通部、中等部、湘南藤沢の3校とも志願者増。早稲田では開校2年目となる早稲田大高等学院の志願者が21.3%増えて536人になり、競争率も2.9倍から3.7倍にアップした。
同じく開校2年目の中央大付も14%の志願者増で人気を集めた。昨秋、中央大の付属校となった中央大横浜山手は438人、64.3%の大幅な志願者増だ。同校は今年の募集までは女子だけだが、来年から中学が共学となり校舎を移転する予定で、人気はさらに高まる可能性がある。
なかでも今年注目されたのが東京都市大等々力だ。もとは女子校だったが、共学部を設置し併設の東京都市大(旧・武蔵工業大)への進学を保証しながら、難関大進学を目指すカリキュラム改革を行った。志願者数は昨年の1700人増に続き、今年も1000人以上増え、志願者は3376人。同じく進学校として知られる男子校の東京都市大付も志願者が10.9%増え、3692人だ。両校あわせて7000人を超える人気だ。
昨春、東大に4人合格者を出している立教新座も、付属校であることに加えて難関大学合格を目指す進学校として人気が高まっている。
入試の改革で人気を集めた学校もある。日本大は午後入試を新しく実施し、志願者は1172人増えて2689人となった。午後入試を増やした桜美林は567人増、同じく関東学院も222人増えた。特待生入試を実施した浦和実業学園は志願者が倍増。1409人から3030人と人気を集めた。
志願者を増やした学校もある反面、中堅以下の学校では志願者が減った学校も多く、中学受験は明らかに人気の二極化が進んでいる。
ここ数年志願者が伸び続けてきた広尾学園は、試験実施の回数を減らしたことが影響して志願者は600人減の3072人となった。大学合格実績アップで難易度が上がりそうだと敬遠された神奈川大付が713人減で志願者が1827人、同じく国学院大久我山も391人減の2426人だった。人気が高まった栄東の影響からか、同じさいたま市にある開智が677人減の3730人の志願者だった。
人気大の付属校でも青山学院、法政大、明治大付中野、明治大付中野八王子が志願者減で、他にも中堅以下の女子校に志願者が減っている学校が目立っている。
◆関西圏も難関上位校が強く 大学付属校の人気も上昇
次に関西圏を見てみよう。首都圏同様に私立中の人気は根強かった。日能研関西によると、受験生数は昨年並みで、受験率は0.3ポイント下がっただけの9.3%だったという。
関西圏でも難関上位校の人気が高かった。灘、東大寺学園、洛南高付や、東京大と京都大の合格者が増えた甲陽学院、それ以外でも洛星、清風南海などで志願者が増加した。神戸海星女子学院、京都女子、甲南女子などの女子校も大学合格実績がアップしており人気を集めた。
大学付属校の人気も上がっている。昨年は併設小からの内部進学者が出るために募集人員が削減され、競争倍率が高まることが敬遠された同志社大や立命館大の付属校、新設2年目の関西大中等部などが志願者を増やしている。
さらに、大阪桐蔭は、関西圏ではまだ実施校が少ない午後入試で人気を集めた。今後は、関西圏でも午後入試が増えそうだ。
今年から始まる小学生の新学習指導要領では、3割内容カットで話題となったゆとり教育カリキュラムが終わる。ゆとり教育による学力低下への危機感から私立中ブームは起きた。その教育への不安がなくなるわけだから、公立でもいいのではないかと考えが高まってきても、それは自然である。
だからこそ、今いちど、中学受験の意味を考え直しておく必要がある。
私立中の魅力は高い進学実績だけにあるのではない。進学実績は各校が努力して作ってきた教育の結果に過ぎない。その意味では、ここ数年高まっている合格実績主義は一面的な学校評価と言わざるを得ない。特色ある教育方針、多感な6年間を友人と共に過ごす良さなど、中高一貫校のさまざまな魅力を総合的に考えて、受験の目標を定めなくてはならない。
(2011.3.5 DIAMOND onlineより転載)
大手塾、個人塾、個別指導塾とタイプいろいろ
中学受験は学習塾選びから始まる
中学受験は塾通いが大前提となる。一般的に高校受験では中学校の先生と学習塾(以下、塾)の講師といった立場の異なる2人のエキスパートから、話を聞いたりアドバイスを受けたりすることができるが、中学受験の場合は公立小学校の先生は頼りにならず塾頼みにならざるを得ないからだ。それだけ塾選びが大切なのだ。ではどう塾を選んでいけばいいのだろうか。
塾には大きく分けて三つのタイプがある。生徒が多い大手塾、個人で地元を中心に経営している個人塾、マンツーマンで教える個別指導塾の三つだ。その特性を踏まえて選んでいくといい。
情報豊富で合格ノウハウもある大手
子どもが競争や講師になじめるかがカギ
大手塾の最大の特徴は、多くの学校の情報を持っていることだ。親の希望に合う学校を教えてくれるし、合格のノウハウもある。難関校に多数の合格者を送り出しているのも魅力だ。
学習面では小学校の全課程を5年生の3学期か、遅くても6年生の1学期までに終え、あとの1年間は志望校の受験対策に専念する先取り学習を行っている。また、塾によっては塾内テストなどの度に、成績順にクラス替えを行う塾もある。トップの教室に入れなかったり、現在いるクラスから落ちたりすることもある。そんな時に、気持ちを切り替えて頑張れるかどうかが向き不向きを決める。
塾選びでは、子どもが講師になじめるかどうかも重要である。若い講師は子どもと年齢が近いだけに親近感を抱きやすいが経験がない分、データに基づいたマニュアル通りの教え方になることもある。大手になるほど幅広いタイプの講師が揃っているが、違う教室に異動になることがある。もう1点、大手塾で問題になりやすいのが子どもの送迎だ。自宅から遠い場合は親の負担が大きくなるので覚悟しておいた方がいいだろう。
大手塾は首都圏では市進学院、栄光ゼミナール、SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーなどがある。SAPIXは難関校に強いとされ、日能研や四谷大塚はともに全国的なネットワークを持っており模試も行っている。大手塾にもそれぞれ特徴がある。説明会や授業見学などに参加して、その違いを確認することが必要だ。
多くの場合、自宅学習用の大量なテキストが家に送られたり、宿題が出たりする。そのテキストや宿題は、子ども一人でやるのか親が手伝うのか、塾によって方針が違っている。「子どもの勉強を見てくれ」というところと、「塾に任せてくれ」というところがある。入塾する前に親のかかわり方を確認しておくことが重要だ。
送迎負担も少ない地元密着の個人塾
個別指導塾は競争学習になじめない子どもに
個人塾は地元に密着したタイプの塾で、数十人から数百人程度の生徒がいるのが普通だ。大手塾や個別指導塾では若い講師もいるが、個人塾には経験豊富なベテラン講師が指導しているところが多く講師の異動もない。大手塾のような膨大な情報はないことが多いが、地元の私立一貫校に関しては難関校も含め、大手塾顔負けの情報を持っている塾もある。立地も地元の駅前にあるところが多く、送迎の負担は減る。
個別指導塾は、大手塾のように大勢の中で競争しながら勉強するのが苦手な子どもに最適だろう。その子の学力に合わせたカリキュラムを組み、マンツーマンで教えてくれる。ただ、最初から個別指導塾に入塾する子は少数派。小学6年生の夏休みなど遅くに中学受験を決めた子、塾代はかさむことになるが、大手塾で上位の成績をとりたい子、大手塾であまり成績が伸びない子などがダブルスクールで利用するケースが多いようだ。
この三つのタイプのどれに子どもが合うか見極める必要がある。
また、休日には子どもの勉強をみるのか、平日も何日かは塾への送り迎えをするのかなど、父親がどれくらい協力するかも、塾選びの重要なポイントになってくる。送迎だけでも父親が協力すれば、塾の選択肢は広がる。
いつから塾に通わせるか?
――小学4年生時からが一般的
では、いつから塾に通わせたらいいのだろうか。この問いに正解はないが、一般的には小学4年生になった時から通塾するケースが多い。
大手塾の中学受験コースは4、5年生で基礎力をつけ、6年生で受験対策に取り組む。そのカリキュラムに合わせるために、4年生から生徒を募集している。中学受験が過熱するにつれ、大手塾を中心にもっと低学年からのコースもある。それを聞くと早くから通わせたほうがいいのではないか、と不安に駆られるかもしれないが、塾に通い始める時期が早いか遅いかで合否が分かれることはない。
ただ、大手塾のほとんどは先取り学習を取り入れているため、4年生から入塾するのが理想的ではある。5年生になって大手塾に入ると塾の学習は小学校の学習よりかなり進んでいることになる。そこでの遅れはテキストをもらって自分で学習するしかないが、いずれ学校で学ぶことだから、決定的な遅れではない。
逆に、いきなり厳しい競争環境の中におかれると萎縮する子、学力不足だと勉強についていけない子は早めに塾通いをした方が良い。こうして子どもの性格と学力を考えて入塾時期を決めるといいだろう。
さらに、子どもを塾に通わせる際にきちんと把握しなければならないのが塾の費用。大手塾で週に3〜4日、毎回5時間の授業を受けた場合、1カ月で支払う授業料は、4年生で4万円、5年生で5万円、6年生で6万円が平均的な金額と言われている。授業料と同じく、夏・冬期講習や特別講座も学年が上がるにつれ高くなっていく。3年間(4〜6年)で塾にかかる費用は、授業料に模試などの諸費用も加えるとおよそ230万円になる。
4年生の時は払えると思った金額でも、5年生からは夏期講習、冬期講習などがあり、6年生になると志望校対策も始まって授業時間が増え、模試や特別講座をいくつか受講したりすると、費用はどんどん膨らんでいく。先まで見据えた資金計画を立てておくことが大切だ。
口コミ、チラシ…塾選びのポイント
入塾後もなじめているかに常に注意を
塾選びでは、口コミの評判も判断材料にはなるが、じつは誰もがいいという塾はめったにない。いい点、悪い点を両方聞いて判断する必要がある。塾に通わせている親に聞くのが一番だ。親が本音を書き込んでいるネットの掲示板、受験生を持つ親や受験を終わったばかりの親のブログなどを参考にしてみるのも方法だ。
折り込みチラシも塾選びの参考になる。この時期、終了した入試の合格実績がたくさん載っている。大手塾の場合、首都圏なら「開成中○○人、桜蔭中○○人合格」、関西なら「灘中○○人合格」などと実績を誇っている。
難関校への合格者数が多い塾ほど良い塾だと思いがちだが、問題は塾生の総数。総数1000人から難関中10人合格と総数100人からの10人では意味が違ってくるのは当たり前だが、大手の塾は競うように総数ばかりを強調する傾向にあるから惑わさてはいけない。
入塾後は、子どもが塾になじめているか、塾を替わりたがっていないかに常に注意を払わねばならない。もちろん、すべてに満足できる塾などそうあるわけはなく、子どもに我慢をさせることも必要だが、重大な見落としがあることも考えられる。
塾の勉強が面白くない、塾での人間関係が嫌だ、親に言われて塾に通い始めたが本心は中学受験をしたくない、などさまざなな理由が発生しうる。そのときは親子で話し合って方向転換を検討せねばならない。
中学受験に塾は不可欠だが、塾が合格させてくれるわけではなく、合格をサポートしてくれるところだ。どんなに実績の高い塾に行こうが、子どもにやる気がないと合格はしない。「塾に行くのは楽しい。勉強だけじゃなく、ガミガミ言うお母さんの顔を見なくてすむから」などとなったら最悪だ。
親の気持ちは子どもにはなかなか伝わらないものだ。受験勉強を塾任せにすることなく、子どものやる気を引き出すよう心がけねばならないことは言うまでもない。
(2011.2.4 DIAMOND onlineより転載)
「集団指導」と「個別指導」の使い分け 【中学受験日々多感】
各塾のチラシが入ってくる季節になりました。
以前は受験というと集団塾が当然とされていましたが、最近では、そう区別もできません。集団指導と個別指導、違いはどこにあるのか。いろいろな視点から見てみましょう。
まずはカリキュラム。集団指導塾ですと、基本的には各塾が定めたカリキュラムがあります。どの時期にどの項目を扱うのが効果的か。これは長年培ってきた、それぞれの塾のノウハウでもあり、ある意味、生命線ともいえます。
算数であるなら、具体から抽象への移行をどの時期で行うのか。「速さ」「割合」「比」の学習時期は大きなポイントになります。社会科では、地理・歴史・公民の学習時期にどの塾でも特色があります。
導入時期が遅く、入試に間に合わなくては論外です。ただ、早く導入すればよいというものでもありません。早すぎて一部の生徒しか授業についてこられないのでは困りますし、小6の夏には忘れてしまって、結局、一から復習し直さなければならなくても意味がありません。この点、個別であれば個人に合わせてカリキュラムを組みますし、個人の理解度に合わせて進度を調整できます。
自分のペースで自分の都合に合わせて学習できるといえば、映像授業が一番です。先生の都合も気にせず、勉強したいときに講義を受けることができます。ただ、注意すべきはカリキュラム進度の管理です。全てを本人任せでは無理が生じます。結局、どの形態でも入試から逆算し、「どの時期に何を勉強したらよいか」を管理できる人がいるかどうかが重要になります。
集団塾の大きな長所は「刺激」ですが、一方で個別対応の度合いは気になります。個別指導では当然、「個々」に完全対応します。しかし、これも何でもすぐに聞いてしまう、頼ってしまう、となると依存心が大きくなり、「自立心」が育たなくなる危険も生じます。
結局、これらは指導法として「教え込まない」授業を実践できているか、講師研修に力を入れているかという塾の理念の問題ともいえます。集団指導でも「個別の面倒見」を実践している塾はたくさんあります。
得意科目と苦手科目、季節講習と通常授業など、科目により、時期により、集団指導と個別指導を使い分ける方も最近は増えています。塾に慣れるまでは質問しやすい個別で、受験が近づいたら刺激を求めてなど、本人の性格も考えて学びの形を選択することも、学力向上の作戦です。(市進個学舎運営本部長 守屋厚志)
(2011.2.16 産経ニュースより転載)
2011年度 中学受験出願予測 (DIAMOND onlineから)
本番直前緊急特集!
塾の競争激化で見えなくなった人気動向
2011年度受験の出願傾向を大胆予測
今年の中学入試は「動向がつかみにくい」と言われている。例年は中学入試の模擬試験の大手である四谷大塚、全国中学入試センター(日能研)、首都圏模試センターが行う“3大模試”の学校別志望者数を前年と比較して分析することで、入試の志望動向を予測していたのであるが、来年度入試分はできなかった。
上位層の生徒が多く学ぶ大手塾のSAPIX(サピックス)のいくつかの塾内テスト日が四谷大塚の模試と同日になったためである。例年はSAPIXの生徒であっても、多くは四谷大塚の模試を受けており、それが上位層の動向を掴む最善の手段であったのだが、今年は受ける生徒が減少した
結果、3大模試のデータからでは上位層の動向が見えなくなったのである。
こうなった背景には「大学受験予備校の競争が中学受験に持ち込まれたため」と見る関係者が多い。というのも、四谷大塚を大学受験予備校の東進ハイスクールなどを経営するナガセが買収。一方、SAPIXは3大予備校のひとつである代々木ゼミナールが買収した。
この二つの大学受験の予備校は、ともに全国展開しており激しい競争関係にある。少子化により大学の経営は厳しいが、予備校だって同じだ。その競争関係が中学受験に舞台を広げたものと見られている。 そうはいっても、2011年も中学入試は行われる。当事者にとって見れば、予測困難といわれる中で的確な志望校選びを行わなければならない。読みにくい2011年度の入試を分析してみよう。
最難関校はいままで以上に受験生が人気校に集中
まずは最難関校。不況の影響から首都圏の中学受験者は「5%程度は減るのではないか」と予測されており、全体としてみれば入りやすくなりそうだが、保護者の志望校厳選化が進んでおり最難関校、男子御三家の麻布、開成、武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉の厳しさには変化はない。そればかりか人気校に今まで以上に受験生が集まり、私立中の二極化が顕著になりそうだ。
焦点は御三家以外の学校だ。
例年、間違いなく人気になるのが前年の大学合格実績が伸びた学校である。いい教育を展開していても大学合格実績が高くない学校はあまり人気にならない。やはり、6年間の教育の成果としての大学合格実績がある程度ないと、行われている教育そのものにも疑問をもたれる傾向がある。
これには二つのパターンがある。ひとつはもともと高い実績があり、それをさらに伸ばした学校。もうひとつは今まで実績を上げていなかったのに、伸び始めている学校だ。この伸びている判断の基準になるのが、首都圏では東京大、東京工業大、一橋大、早稲田大、慶應義塾大、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)などへの合格者数。関西では東京大、京都大、大阪大、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)などになる。判断基準となる大学がこの顔ぶれになるのは、私立中を目指す親が希望する進学先を「最低でも首都圏ならMARCH、関西圏なら関関同立」と考えるからだ。
さて、この人気になる条件を満たした学校はどこか。
攻玉社、海城、駒場東邦、サレジオ学院、 聖光学院、豊島岡女子学園などが人気に
まず、「さらに実績を伸ばして人気がアップしている」学校の一番手は攻玉社だ。昨年、東大合格者が6人から3倍の18人に、早稲田大+慶應義塾大の合格者合計が142人から260人へと倍近くに増えた。この実績があれば人気化は間違いない。中学入試では必要不可欠な過去の入試問題集を発行する大手出版社「声の教育社」のデータによると、攻玉社の過去問は前年より10%以上も売り上げが伸びているという。もちろん、男子校でトップだ。
この他にも東京大合格者が15人増え49人となった海城、22人増61人の駒場東邦、8人増11人のサレジオ学院、16人増65人の聖光学院、7人増24人の豊島岡女子学園などが人気になりそうだ。なかでも海城は今年から高校募集をやめ完全中高一貫校となる。中学入試では、高校募集のある学校より完全中高一貫校のほうが人気が高い傾向にあるからなおさらだろう。ただし昨年の進学実績がどうあれ、人気化しそうなこれらの学校と同じ偏差値帯にある芝、城北、巣鴨、桐朋、浅野などは、大きく変わったわけではない。逆に人気の陰に隠れた格好で狙い目とも言える。
一方、偏差値が低めであるが東京大に1人でも合格者を出したところも人気になる傾向がある。子どもがどこを第一志望にしようと、教員がその面倒を見てくれる安心感につながる。それを判断する材料が、最難関の東京大に合格者を送り出しているかどうかになるようだ。「もともと実績がそう高くないのに伸び始めた」学校が人気になる理由だ。今年で言えば昌平、桜美林、淑徳、横須賀学院などだ。
早稲田大や慶應義塾大の実績も注目度は高い。合格者が増え人気になりそうなのが獨協埼玉、順天、青稜、東京女学館、鎌倉学園など。特に獨協埼玉は早稲田+慶應の合格者数が2人から27人に激増した。また、MARCHの合格者が伸びたことで今年の入学者が卒業する6年後には上位の大学への合格者が増える、という期待から人気になりそうなのが大宮開成、大妻中野、駒込、藤嶺学園藤沢などだ。
関西では四天王寺、甲陽学院、智辯学園和歌山、 京都産業大付、金蘭千里、滝川が人気化か
関西に目を移すと、京都大合格者が前にも増して伸びている四天王寺、甲陽学院、智辯学園和歌山。関関同立の合格者が増えた京都産業大付、金蘭千里、滝川などの人気も上がりそうだ。ただし、関西では上位校は棲み分けが進んでおり、そう極端な人気の変化はないと見られる。
これら明らかな人気化の要因がある学校のほか近年、人気が上昇傾向にあるのが開智、栄東、京華、世田谷学園、本郷、頌栄女子学院、田園調布学園、富士見、洗足学園など。特に栄東は今年から募集人員を120人から240人に倍増させており、さいたま市見沼区にあるにもかかわらず東京からの受験者も多く激戦になりそうだ。関西では来年から開明、須磨学園、午後入試を始める大阪桐蔭などの人気がアップしそうだ。白陵は実績が高いが志願者が減少ぎみで狙い目だ。
まだ目に見えた実績はないが人気を集めているのが広尾学園。昨年の志願者は3,672人で東京のナンバーワンであるが、これは教育の中身に共感する保護者が多いからだ。例えば、定期試験の度に分厚い問題・解答・解説集が配られ、生徒は試験の復習ができるようになっているなど、教育指導は手厚い。
昨年、中学を新設した早稲田大高等学院、中央大付、それに中央大と合併して今年から付属校となった中央大横浜山手(旧横浜山手女子)も志望者が増えている。大変な人気だったのが東京都市大等々力だ。東京都市大はもとは武蔵工業大で、文系学部を新設して校名を変更した。東京都市大に全員進学できることに加え、難関大にもチャレンジできるのが魅力に映った。一方で早稲田大高等学院人気化の影響で志望者が減りそうなのが早稲田で、根強い人気校だが穴場になりそうだ。
関西圏でも関西大第一、関西大付、関西大北陽の関西大付属の人気が高い。甲南、甲南女子、近畿大付、近畿大和歌山など、他大学への合格実績が高い学校も人気だ。
ただし、よほどのことがない限り、この土壇場に来ての第一志望の変更は避けたほうがいい。一生に一度の中学受験だから気持ちが揺れるのは分かる。しかし、親がぶれていたのでは子どもにも伝わってしまう。ここは早く決めて、長丁場となる入試のため、特に後半戦に息切れがしないよう体調を整え、精神力を養っておくことのほうが重要だ。
(2011.1.7 DIAMOND onlineより転載)
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