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  2011年中学入試の総括と2012年度入試の展望  

 

 

 2011年中学入試の総括と2012年度入試の展望

 

不況の大波で首都圏中学受験生数が減少

今年も、首都圏では例年と同じく1月から2月にかけて、中学入試にチャレンジする多くの小学生と保護者の熱い戦いが繰り広げられました。最初に、この2011年の首都圏中学入試の全体的な状況を、具体的な数字から振り返ってみましょう。

今年の2月1日入試校への推定の総応募者数は、60,958人(昨年比98.6%)で昨年よりも2,000人近く減少。ただし、午前入試校のみの応募者数を算出して計算すると、今年の首都圏中学入試の受験生数は推定で45,600人(昨年比98.1%)となり、昨年よりも約900人減少しました。やはり、この長引く不況の波が、中学入試にも大きく押し寄せてきています。ただし、昨秋の3大テスト(首都圏中学模試センター、四谷大塚、日能研)の小学6年生の参加者数は、9月から12月の4回ともに前年比で7〜10%の減少でしたので、多くの関係者が今年の首都圏中学入試の受験生は昨年よりも7〜10%は減少すると予想していました。それからすると、実際は1.9%の減少にとどまりましたので、やはり中学入試に関する根強い人気がうかがえます。

また、2月1日の午前入試校の受験生数は減少しましたが、逆に午後入試校の受験生数は増加しています。これは、人気校の午後入試新設や募集数増加など数々の要因がありますが、例年にも増して「早く合格を勝ち取りたい」という親子の熱い切実なる思いが、この午後入試校受験生数の増加に表れているのです。

 

全体の募集数増加により、男女とも合格率(形式)が上昇
1人あたりの受験校数は男女平均「6.62校」をマーク!

この2011年3月に小学校を卒業(見込み)する首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の306,747人のうち、45,600人が推定で中学受験をしましたので、中学受験率は14.87%(昨年は15.32%)となり、依然「6人〜7人に1人」が今年も中学を受験したことになります。
この3年間の首都圏中学入試における男女それぞれの募集定員の総合計を、受験者数で割って「合格率(どこかの中学に合格できる確率)」を算出したものです。2009年からこの2011年にかけて、男子の合格率は70%台なかばから93.1%まで上昇。女子も116.7%と男子同様に上昇。仮に入学する学校を選り好みしないとすれば、かなり競争が緩和したと「数字上」はいえます。しかし、個々の学校をみれば、「人気校の二極分化」が猛烈に進み、受験生数の減少によって今年の入試は易しくなったなどとはとてもいえません。

今年は男子の受験生は1人あたり平均で約6.58校(昨年も同じく6.58校)、女子の受験生は1人あたり平均約6.67校(昨年は6.54校)を受験(=出願)している形になり、男女平均では6.62校(昨年は6.56校)で、この1人あたり平均「6.62校」の受験校数は、当初の予想をかなり上回るものです。この長引く不況下にあって、中学受験生の総数と受験率が今年も減少に向かったなかで、逆にこの「平均受験校数」が増加したということは注目に値します。また、最近では複数回(3回以上の)入試の実施校への全回一括出願が当たり前となってきていますが、平均6.62校の出願は後半戦まで粘り強くあきらめずに受験にチャレンジしていることになり、改めて注目するべきで、より多くの入試に挑むことが、錯綜するこの首都圏中学入試を勝ち抜く大きなポイントであることは間違いないようです。来年2012年以降も、この「1人あたりの平均受験(出願)校数」は減少しないでしょう。

 

「予想外」の展開を見せた2011年首都圏中学入試

それでは、2011年入試における全体状況として目立った傾向を以下にあげます。

 

@ 2011年入試は「男女逆転現象」入試となる

数字上では女子に比べて男子は「どこでも良いから、どこかの学校へ入りたい」と願っても、男子の総定員数が、男子の受験者数を下回るため、どこにも合格できない「全滅者」が出ます。逆に女子は選り好みをしなければ、数字上ですが「どこかの学校」に合格(入学)できることになります。つまり精神的に、女子受験生より男子受験生のほうが「厳しい」ものがあり、併願作戦においても、女子の大胆な「チャレンジ的」受験に対し、男子は比較的「慎重」となっている傾向があります。
しかし、今年の入試では、男子が「チャレンジ的」な受験が多く、女子は「慎重」な受験が多く見られ、例年とは逆の、予想できなかった展開を見せています。
具体的には、2月1日の応募状況では、男子は開成、早稲田高等学院、駒場東邦、海城、早稲田実業、攻玉社、慶應普通部などの難関校が応募者を増やしましたが、女子では、桜蔭、女子学院、フェリス女学院、横浜雙葉、早稲田実業などの人気難関校が応募者を予想以上に減らしました。この例年とは全く違う男女の入試傾向は今年に限ってのものなのか、来年以降も引き継がれるのか、現在は全く予想がつきません。

 

A 予想どおりの受験生数減少だが、予想外の午後入試の受験生数増加

前述のとおり、今年の首都圏中学入試の受験生数は46,500人→45,600人へと減少しました。しかし、2月1日の午後入試の推定の「実受験者数」は、2009年から15,131人→15,770人→15,840人と増え続けています。これは、当然「何が何でも私学へ」という思いと「早く1校でも合格を取りたい」という思いなどが重なり、全体の受験生数が減っても、午後入試校の受験生数は増えるという「逆のベクトル」の入試状況となりました。
特に、今年は神奈川で、2月1日午後に人気校の関東学院A(2科、男女50人)が新設し、男子は350人、女子は161人もの多くの応募者が集まり、同じく1日午後に新設した湘南学園A(2科、男女30人)には、男子148人、女子は112人の応募者がありました。また、2日の午後に新設の日本大学B(2科、男女40人)は、男子が619人、女子は365人という多くの応募者を集め、3校とも大変に厳しい入試状況となったようです。もちろん、この3校の新参入によって「大打撃」を受けた他の午後入試校も多く、難度変化も多くの学校であったようです。来年入試では受験生数が増加するのか、減少するのかは現段階では予想できませんが、午後入試が来年も一段とヒートアップすることは容易に予想できます。

 

B 人気上々の2011年の新設校
昨年入試では、早稲田高等学院、中央大学附属という有名大学付属高校の中学新設、都立中高一貫校の一挙4校の新設など、新設校に関して話題豊富でしたが、今年は千葉で、千葉明徳(千葉市)、二松学舎大学附属柏(柏市)、埼玉で、開智未来(加須市)の3校が共学校として中学を新設しました。
千葉明徳は、12月2日は2科目で第1志望者対象の入試を実施し、男女30人の募集ですが男女で24人の合格者が出ました。二松学舎大学附属柏は、3回の入試ともに予想どおりの人気となり初年度から厳しい入試状況となりました。埼玉の開智未来は地理的にこの3校の中では一番不利と思われますが、「未来クラス入試」は人気が高く、予想以上の難度の入試となったようです。3校とも、来年の2年目を迎える入試では今年以上に人気上昇が予想されます。

 

C 今年は慎重?首都圏外の学校の1月入試受験
東京・神奈川の受験生を中心に本番入試に向けての「プレ入試」として、午後入試同様に大変な人気がある「首都圏外の学校の1月入試」ですが、今年は受験生数の減少もありますが、軒並み応募者が減少しました。男子では、函館ラ・サールの応募者は610人(昨年比99%)でほぼ昨年と同じですが、西大和学園は394人(96%)、那須高原海城は693人(93%)、長崎日大の男子はわずかですが959人(97%)といずれも応募者が減少。女子では、土佐塾の女子の応募者は1,203人(95%)、佐久長聖の女子は341人(93%)と減少。一方、2科目生も受験可能な長崎日大の女子は1,103人(106%)と、昨年に続き応募者が増加。男子よりも慎重さが必要といわれる女子の「試し受験」にあっては、同校の入試難度がチャレンジしやすかったようです。この多くの首都圏外の1月入試校の応募者数減少の一つの要因として、本番入試に向けてインフルエンザを怖がり、受験をやむなく避けたこともあるようで、来年入試では再度応募者増加に転じる可能性がかなりあります。

それでは、男女別に主だった学校の入試状況について見ていきますが、まず冒頭で述べたように、今年の首都圏中学入試の受験生数は昨年比「1.9%」減少しました。よって、一概にはいえませんが、仮に昨年比で2%程度の応募者減でとどまっている場合は、その学校は今年の入試では高い求心力を維持していると見てよいと思われます。

 

<男子>
開成、筑波大附属駒場の最難関上位校がさらに人気上昇
埼玉では、台風の目となった栄東

1月入試では、埼玉では栄東が定員数を大幅に増加したのが人気となり、11日の栄東(東大選抜@)の男子の応募者は1,092人(△365人。150%)、10日の栄東Aも1,807人(△701人。163%)と凄まじい大幅増加。逆に開智(先端A)は513人(▲36人。93%)、開智@は、661人(▲113人。85%)と減少。2年続けて応募者が減少した立教新座@は2,150人(△124人。106%)と、今年は増加に転じました。千葉では、市川@の男子は1,952人(▲140人。93%)と昨年より減少しましたが難度は不変です。1月入試の最難関渋谷幕張@は1,429人(△84人。106%)と再び人気増加です。また、千葉県立千葉には643人(△35人。106%)の応募者が集まりました。茨城では、江戸川取手、清真学園、茨城、土浦日大の4校の人気上昇が見られました。

2月1日入試では、開成の応募者は1,176人(△61人。105%)で、さらに激戦となりましたが、麻布は995人(▲58人。94%)と減少。また、駒場東邦は628人(△30人。105%)、慶應普通部は687人(△7人。101%)、武蔵も578人(△1人。100%)と高い人気を維持。中学新設2年目の早稲田高等学院は、初年度の昨年は難関校と敬遠された反動からか、今年の応募者は535人(△94人。121%)と大幅に増加です。これらの人気増加校とは逆に、早稲田@849人(▲83人。91%)、桐朋は451人(▲48人。90%)、巣鴨@は300人(▲80人。79%)、芝@も664人(▲72人。90%)と応募者の減少が目立ちました。また、攻玉社@は489人(△51人。112%)と2年続きで応募者を増加させましたが、高輪Aは337人(▲56人。86%)と予想を上回る減少でした。神奈川では、逗子開成@が616人(▲25人。96%)とやや応募者を減らしましたが、山手学院Aは298人(△67人。129%)と目立って応募者の増加がありました。
そのほか、京華、佼成学園、さらに系列の東洋大学と法人合併し、2012年からは赤羽に校舎移転して新たなスタートを切る京北などに、若干人気増加傾向が見られました。

2月2日入試では、栄光学園は697人(▲3人。100%)、聖光学院は740人(△14人。102%)とほとんど昨年並みですが、慶應湘南藤沢は476人(△49人。111%)と応募者の増加が目立ちました。この2日は大学付属校同士の競合が年々激しさを増していますが、今年は明大明治@が539人(△0人。100%)、立教池袋@は277人(△17人、107%)、法政大第二@は591人(△33人。106%)と安定した人気を維持しています。一方、青山学院は513人(▲20人。96%)、学習院@は350人(▲34人。91%)、明大中野@は897人(▲94人。91%)、神奈川大付属Aは415人(▲186人。69%)と応募者が大きく減少。全体的に見て、2年続きで大学付属校人気は回復していないようです。進学校では、城北Aが1,033人(▲107人。112%)、攻玉社Aも832人(△167人。125%)と大幅に応募者が増加しましたが、逆に巣鴨Aは523人(▲150人。78%)と予想外の大幅な減少で、来年は反動の可能性が高く要注意です。ほかでは、午後入試をこの2日に新設した桜美林は男女30人募集のところ、男子の応募者だけで353人も集まり、大変に厳しい入試状況となりました。

2月3日入試では、首都圏入試の再難関の筑波大附属駒場の応募者が862人(△79人。110%)で、今年の男子の強気なチャレンジ傾向を象徴するように応募者の増加が目立ちます。また、難関上位校の早稲田Aは1,311人(△15人。101%)、海城Aも1,203人(▲171人。92%)と減少が目立ったのは予想外でした。このほか、山手学院C、東京都市大学等々力などの応募者の増加が目立ちましたが、逆に法政大A、日本大第二Aは大幅に応募者が減少しました。

また、受験生はどこか1校にしか出願できない都内公立中高一貫校(11校)ですが、今年の応募者(一般枠)の合計は、男子だけでも5,070人(昨年は4,973人。△97人。102%)と増加したことには大いに注目しておくべきでしょう。

 

<女子>
今年は目立った、女子上位生の「安全志向」
今年の女子は進学校人気が一段と上昇

1月入試では、埼玉最難関の浦和明の星女子@が1,937人(△88人。105%)とさらに応募者を増やし入試難度を高めています。また、男子同様に栄東Aは563人→987人(175%)と凄まじい応募者増加。18日という遅い日程の獨協埼玉@も564人(△51人。110%)と人気上昇しました。また、星野学園@は670人(▲110人。86%)と、予想外の大幅な減少で逆に来年は要注意となりました。
千葉では、市川@は1,014人(▲94人。92%)と減少したものの難度は不変のようです。また、難関校の渋谷幕張@、東邦大東邦(前)も昨年並みの応募者を集め、変わらぬ高い人気です。女子校では、国府台女子@は1,018人(△136人。115%)と応募者の増加が目立ちましたが、和洋国府台女子@は840人(▲153人。85%)と大きく減少しました。

2月1日入試では男子の難関校への強気のチャレンジ傾向とは遠い、桜蔭の応募者は503人(▲38人。93%)、女子学院は744人(▲71人。91%)、フェリス女学院は434人(▲58人。88%)、早稲田実業は227人(▲23人。91%)と、例年とは違う「慎重な安全志向」が見受けられます。そのような状況下で、雙葉は476人(△89人。123%)、横浜共立学園Aは423人(△47人。113%)と、ともに応募者を増加させました。また、鴎友学園@は313人(△15人。105%)、渋谷渋谷@も296人(△31人。112%)と安定した高い人気を今年も維持しました。2科目受験生から人気の香蘭女学校は441人(▲30人。94%)、他大学進学推奨で人気上昇中の昭和女子大昭和Aも 185人(▲90人。67%)と予想外の応募者減少。両校とも来年は今年の反動による応募者増加が十分に予想されます。このほか今年は、富士見@、山脇学園A、江戸川女子一般@、大妻中野Aアドバンストなども目立って人気が増加。堅実な指導により大学進学実績を伸ばすとともに、入試改革や学校改革、さらに保護者と受験生への強いアピールで求心力を強めてきたことが注目されたのでしょう。

2月2日入試では、この数年高い大学進学実績で人気の豊島岡女子@は1,118人(△57人。105%)とさらに応募者を増やし、今年もかなり高い入試難度となりました。一方、女子には人気の青山学院ですが、応募者は難化でやや敬遠され641人(▲92人。87%)と大きく減少。女子も男子と同じく今年は進学校人気が上昇したようです。白百合学園が300人(△25人。109%)と増加したのも、同校への進学校としての期待からでしょう。神奈川の女子上位生の併願校として人気の高い湘南白百合学園は216人(▲3人。99%)とほぼ昨年並みですが、鎌倉女学院@は607人(▲92人。87%)と今年は応募者が大きく減少しました。また、神奈川大付属Aの女子も男子と同じく、応募者は290人(▲112人。72%)と大きく減少です。このほか、東京都市大学等々力、共学化と移転で話題校の中央大横浜山手、山脇学園、青稜などの堅実な進学校、さらに和洋九段女子、実践女子、北豊島などの伸び盛りの学校が応募者を増やしました。

2月3日入試では、慶應中等部は493人(▲41人。92%)とやや減少ですが、最難関レベルの入試としては安定した印象です。また、豊島岡女子Aは989人(△80人。109%)と2日の@同様に今年も大きく人気を高めています。横浜共立学園Bは509人(▲90人。85%)清泉女学院Aも257人(▲73人。78%)と予想外の大幅な応募者減少。国立大附属では、筑波大附属が292人(△1人。100%)、東京学芸大附属世田谷が229人(△30人。115%)となっていますが、他の学校は減少していて全体に少し人気離れがあるようです。一方、都内の公立中高一貫校(11校)の応募者(一般枠)の総合計は、5,893人(△197人。103%)と男子と同じく増えていて、今後も首都圏の中学入試全体に及ぼす影響は少なくないでしょう。

 

 

早くも動き出した、来年の2012年入試 

今年の入試が終わり、ひと段落した3月5日現在でも、早くも来年入試に向けての入試改革の発表があります。まず、2009年から中央大学との教育連携で話題となった中央大横浜山手は、来年入試では新たに男子を募集して共学校となります。全体の募集の増加はないようで、来年は男女ともかなり高い入試難度となりそうです。さらに、再来年は現在地から横浜市港北区(横浜市営地下鉄、センター北駅徒歩5分)へ校地移転します。次に女子校として人気・伝統校の晃華学園は例年2月2日、3日、5日の3回入試ですが、来年は2月1日、2日、3日の3日間連続入試とします。両校の入試改革は、周辺各校の来年の入試に多くの影響を与えそうです。また、来年は八王子学園八王子高校が中学校を新設します。推測ですが男女120人で3〜4回の入試日程となりそうです。

今後も続々と各校の入試要項変更が出てきます。予断を許さぬ来年2012年入試を勝ち抜くためにも、学校説明会などに参加して、多くの学校・入試情報を得ることも非常に大切だと思います。

 

 

 

 

情報協力:声の教育社

 

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