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高校入試の展望 【中学受験わかばナビ】
どうなる?どうする?高校入試 2011年度入試
今春入試では不景気に加え、公立高校学費無償化政策の影響により公立高校人気がさらに上昇しました。中3人口の増加に対し、東京・神奈川では公立高校の定員数をさほど増員しなかったため、倍率は上昇。その結果、人気の高い上位校ばかりでなく、厳しい入試になりました。
公立高校入試制度が大幅に変わった埼玉に続き、千葉でも来春から新入試制度が導入されます。どちらも学力重視傾向が強まり、入試日程も現在より後ろに変わります。
現中3生が受験する2010年度の中3人口は減少しますが、公立人気の高さは変わりそうにないので、油断はできません。 また、東京では都立との併願推薦の廃止が徹底されたためか、人口は増加しているのにもかかわらず、都内私立の受験生が減少。近隣他県では私立の受験生が増加しました。
公立では安全志向が強まりましたが、確実に合格をねらう傾向は今後も続くかもしれません。
中高一貫校の開校や増員によって、高校からの募集停止や削減は続いているため、公立はもちろん、上位校をねらう受験生にとっては厳しい入試が続きそうです。
選択肢が減っていく上位校
中高一貫校がもたらす定員削減
2011年度に高校募集定員を削減するのは県立千葉(320名→280名)、都立武蔵(197名→約80名)、都立北多摩は立川国際中等教育学校として4年目を迎えるため、高校からの募集は停止になります(156名→0名)。
私立では、海城(85名)、富士見(30名)、東京純心女子(30名)、神奈川学園(10名)、洗足学園(音楽科)(45名)が募集を停止します。いずれも中学募集の多い男子校・女子校です。
海城は500名以上の応募者がいましたが、年々減少していました。今春407名が応募し246名が合格しています。中学のある私立上位校が高校募集をしているケースは今や希少な存在です。共学校人気と公立高校人気が強まり、男子校・女子校の上位校では、中学入試に募集をシフトする動きが止まりません。高校募集停止や削減を検討している私立学校は他にもあることでしょう。
2010年度には公立・私立とも合わせて都内だけで1150名以上もの募集定員が減っていました。
中学開校によって、早稲田大学高等学院(600名→480名)、中央大学附属(500名→350名)、成立学園(400名→360名)、都立では富士(募集定員316名)と大泉(募集定員277名)が各120名、南多摩(募集定員301名)と三鷹(募集定員317名)が各150名、削減されました。半減した南多摩と三鷹は中等教育学校であるため、3年後には高校からの募集を停止します。
募集を停止した私立高校が東京都市大学附属(男子40名募集)。内部進学の開始や内進生の増加によって募集人員を減らしたのが、東海大学高輪台(男女320名→240名)、豊島岡女子学園(女子135名→90名)、法政大学(男女122名→90名)、広尾学園(男女180名→100名)等。上位校や人気校ばかりですから、上位生にとっては選択の幅がかなり狭まりました。
今後も、大学附属校や人気を集めている私立高校で新たに中学を開校する動きが出てくる可能性は大いにあります。2011年度の都立白鴎を皮切りに年々、公立中高一貫校一期生の進路実績が出始めますが、その成果によっては公立中高一貫校が増加する可能性も出てきます。
さらに中高一貫校が私立・公立ともに増えるならば、その多くは、元々入試難易度の高い高校でしょうから、上位校の高校募集枠はますます減少し、選択肢が減っていきます。「ウチは中学受験なんて考えていない」というご家庭や受験生であっても、その影響は受験学年を迎えたときに無視できないものになってきました。
一方、伝統的な進学校の募集枠が減ってきたことで、進学色を強めたり、様々なコース制を設けたりしながら改革を進めている私立高校が伸びてきてもいます。保護者の方は昔のイメージや先入観を捨てて判断することも必要でしょう。現中3生は激戦だった昨年より人口は減りますが、人気上位校の難易度はあまり変わらないでしょう。
なお、中学を開校する予定の二松学舎大学附属沼南では二松学舎大学附属柏に校名を変更し、中学から102名を募集、千葉明徳では120名を中学から募集する予定ですが、高校募集数は今春と変わらないようです。
合格基準の変動、共学化人気にも注意
全体的に、公立・私立とも安全志向が見られた今春入試より合格しやすそうな高校に受験生が集中する現象も見られました。今春、入学者数が定員をオーバーしたところでは、来春の合格を絞り込む可能性があり、募集定員は変わらなくても合格基準や内申基準を上げることがあります。その逆に、入学生が減ったところでは基準を下げることもあります。
男子校・女子校が共学化することはあっても、共学校が男女別学校に変更されることはないため、共学校は増える一方です。それだけ共学人気は高い、ともいえますが、共学にすれば人気が上がるというものでもありません。 2010年度は、女子校から共学化した東京都市大学等々力が大変な人気を呼びました。90名募集に対し、910名が応募しています。
2011年度に共学化を予定しているのは、男子校の目黒学院・特進コース、女子校の貞静学園、東星学園、横浜国際女学院翠陵から校名も変更する横浜翠陵の4校です。東星学園は3年前の中学共学化から学年進行での実施の予定です。
新たに誕生するのが開智未来です。埼玉の進学校のひとつ、開智の教育理念を踏まえて、中学・高校同時に募集を開始します。場所は加須市であるため、県内ばかりでなく、群馬・栃木からも広く受験生を集めるかもしれません。
激戦だった2010年度の首都圏公立入試
今春の2010年度入試は、前年に急上昇した公立人気がさらに上昇、都立や神奈川公立では大変厳しい入試になりました。
東京では推薦入試の実倍率が2.94倍から3.03倍、一般入試の平均実倍率が1.38倍から1.41倍に上昇。一般入試では12,457名もの不合格者を出しました。昨年度、20年ぶりに不合格者数が1万人を超えましたが、それを大きく上回る不合格者数です。
神奈川の前期では高人気に敬遠傾向がはたらき、2.19倍から2.17倍に下がっているものの、後期の平均実倍率は1.39倍から1.41倍に上昇。後期の不合格者が9,284名。首都圏では東京に次ぐ多さで、前年より896名増えています。
千葉では特色化選抜が昨年度と同じ2.21倍のまま、一般では1.33倍から1.32倍とほぼ横ばいでした。中3生の人口増加に公立・私立とも募集数や発表数を増やして対応した結果、倍率上昇を抑えることに成功しています。
入試制度が大きく変わった埼玉では、昨年度までの約4割から約8割に合格枠が広がった前期の実倍率が2.88倍から1.49倍に減少し、残る2割の合格を決める後期が1.31倍から1.78倍に増えています。
1都3県の不合格者数は約33,458名でしたが、その多くが併願の私立高校や公立定時制高校へ進学したと推測できます。
厳しさを増す東京・神奈川の公立入試
中3人口の増加、不景気、新政権による学費無償化政策などが公立人気を後押しし、東京と神奈川の公立高校入試では大変な激戦になりました。
平均倍率の高さ、不合格者数の多さは受験生の間にも浸透していたのでしょう。安全志向が目立ちました。地域によっては各公立中学校の進路指導が合格を優先させた結果、例年より2ランクから3ランクも合格ラインを下げられた受験生もいた模様です。近年の普通科人気に押され気味だった専門学科の倍率も上昇。受験生は少しでも合格可能性の高い高校を求めて分散し、その結果、都立では全日制高校の追加募集は行われませんでした。
その一方で、都立新宿や横浜翠嵐のように難しい入試になることが予想される上位校に受験生が集まる傾向もありました。「どうせ難しいのなら、行きたい高校を受けてみよう」という開き直りも受験生の一部にはあったのかもしれません。その結果、不合格になった受験生が数多くすべり止めの私立高校に入学したものと思われます。
来年度は中3人口が減るので、公立高校の増員分は元に戻ることが予想されます。今春入試ほど高倍率にはならないと思われますが、公立人気に変わりはないため、入試が易しくなるとは考えにくいです。
都立併願推薦の廃止により、受験生を減らした都内私立
今年度から都立との併願推薦が一切認められなくなった都内私立では一般入試の併願優遇制度で対応しましたが、浸透しにくかったこともあったのでしょう。
中3人口の増加にもかかわらず、全体的には都内の私立受験生数が減少しました。
一方、隣接他県の私立受験生数は増加しました。2年目を迎え、併願優遇制度がもっと認知されれば、来春入試では揺り戻しで都内私立高校の受験生が増える可能性もあります。
公立高校では例年以上に安全策をとる受験生が増えた結果、志願順位に関係なく、私立の受験校選びでも安全志向がはたらいたようです。難関上位校と呼ばれる私立でも、有名大学附属校の人気は高かったものの、進学色の強い高校の一部では敬遠傾向も見られました。内申基準を下げて緩和すると受験生が増える、といった現象も起きていたようです。
公立高校入試制度が変わる?
2010年度から大幅変更される埼玉、2011年度から改革の千葉
2010年度入試から埼玉では公立高校入試制度が大きく変わりました。2011年度からは千葉でも入試の変更が予定されています。
埼玉の主な変更点では、入試日程が2週間ほど遅くなり、前期募集で大勢が決まり、学力重視の入試になる、ということでした。
千葉でも、素案の骨子として公表されている内容はよく似ています。
・ 特色化選抜を前期選抜に変更、実施時期を2月上旬(1日)から2月中旬(2日間)に。
・ 一般入試を後期選抜に変更、実施時期を2月末日(2日間)から3月上旬(1日)に。
・ 特色化選抜枠10〜50%から、前期選抜枠普通科で10〜60%、他学科で50〜80%へ。
・ 特色化選抜では面接・作文・適性検査・学校独自問題から1つ以上を各校が選び実施しているが、前期選抜では1日目が5科学力検査、2日目に面接・作文・適性検査・学校独自問題から1つ以上を各校が選択して実施。
・ 一般入試では1日目に5教科学力検査、2日目が面接、作文、実技検査等から1つ以上を各校が選択して実施しているが、後期選抜では5科のうちから3科以上を各校が選択して実施。
埼玉、千葉に共通しているのは学力重視と入試までの期間の延長です。埼玉では現行の2回ある入試機会を2年後には一本化する予定です。
東京・神奈川では、今のところ大きな変化の動きは見られませんが、主に進学重点校で行われている学校独自問題について、近い将来、見直されるかもしれません。
新公立入試制度で埼玉の受験生はどう動いたのか?
首都圏では入試制度が変わると受験生の安全志向が目立つものですが、埼玉ではチャレンジ志向が見られました。新たな制度になって、どのように志望校を選ぶのが良いのか迷った挙句、「行きたい学校を受験しよう」と決めた受験生が多かった印象です。
しかし、強気の選択をした受験生ばかりではありませんでした。前期を不合格になった約16,000名のうち、後期も受験したのは約14,000名。約2,000名は後期を受験せずに、すべり止めの私立高校か公立の定時制高校にシフトしたことになります。
また、わずか2割しかない合格枠であるにもかかわらず、果敢に上位校を受験する受験生も数多く、難関上位校の倍率は上昇していました。
埼玉でも中3人口は増加し公立人気は高いことに変わりはありません。しかし、「志望順位をいくつも下げてまで公立高校入学をねらうくらいなら、すべり止めの私立高校への進学を選ぼう」と受験生が考えた結果が、後期の「狭き門」を敬遠することであったり、上位校にチャレンジすることであったりしたようです。
このような受験生の動向は今後も見られる可能性があります。また、新制度の千葉では埼玉ほど後期の合格枠が小さくないものの前期の占める割合が高い点は同じです。埼玉の受験生より弱気な選択をする受験生が多いような印象もありますが、同じような動きをするのか注目されます。
確実な併願作戦と慎重な志望校選びを
大学進学実績を伸ばしている高校に人気が集まるのは、毎年のことです。また、高倍率が続く高校では敬遠傾向がはたらき、若干緩和するのも例年のことです。都立私立を問わず、制服を変更すると女子の人気は上がる傾向があります。このような動向は今後も続くと思われます。
公立高校では強気の選択ばかりではなく、安全志向も高まっています。ご家庭の事情から「できれば公立」ではなく「何が何でも公立」という受験生も増えています。「行きたい学校」より「入りやすい学校」を目指して、志望変更期間に大幅な移動が見られたり、定員割れをする高校がなくなったり、二次募集で大変な競争率になったりしたケースもありました。また、学費が全日制より安い昼間定時制の人気の高さも注目されています。
来年度以降も同じような状況が予想されるため、まず大事なことは厳しい入試に対抗するだけの学力をつけることです。内申点を上げることが当面は大事ですが、入試本番での得点力も重要です。早いうちから過去問題にあたって、傾向を知ることも合格への近道です。
しかし、入試の競争率が上がれば、不合格になる可能性も高まります。すべり止めとなる併願校を選び、早めに合格を確保しておくのも大事なことです。「お金がかかる私立より公立へ」というご家庭や受験生にとって特待生制度は検討の価値があります
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特待生制度を実施する私立高校は増加しています。特進クラス・特待生と聞くと一部の成績優秀生だけの特別な話と思ってしまう向きもありますが、必ずしもそうとは限りません。学校の難易度によって基準点も異なるので、ある程度の成績を持っていればチャンスは十分にあります。
情報協力:声の教育社
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